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宇都宮美術館 企画展「視覚の共振・勝井三雄」が開催されます。

2019.03.29

宇都宮美術館 企画展「視覚の共振・勝井三雄」が開催されます。

戦後日本のグラフィックデザインを牽引してきたひとりである勝井三雄の
半世紀に渡るデザイン活動とデザイン作品を網羅的に公開する展覧会が開催されます。

1800年から2019年までのデザイン史を振り返りながら、勝井が何に触発され、
それがどのような活動へと転換されたかを俯瞰することができる年表を
プロムナードギャラリー30mの壁面にて展開します。
同時に関連した書籍など貴重な資料を並列することで、時代の変化や出来事に
敏感に反応しながら多くの名作を生み出してきた勝井三雄のデザイナーとしての
アイデンティティに触れる機会となります。

視知覚の原理を再認識することができる作品や、森羅万象が二次元平面に凝縮された作品など、
光と色を主題とした様々なポスター作品を展示する「色光の部屋」。
ここでは、2016年に開催された「兆しのデザイン」にて発表したインスタレーション作品を再現するなど、
人間が感応する世界を様々な視点で表象化された作品を公開します。

形や色彩の生成原理を探求し、それらが連続することで生まれる変容・変形の過程を探求した実験作品、
これらの研究が実践へと活かされたカレンダーや書籍、雑誌、楽譜、などの装丁、
異分野の作家との協働の中で、彼らの「存在の刻印」ともいうべき作品集や写真集、
あらゆる要素を俯瞰し体系立て、相互の連関性を見出しながら統合していく編集造形など、
知の基盤を自ら作り上げながらもそれを活かしながら世界像を構築していった作品群を公開する
「情報の部屋」。
ここでは1000点を超える書物やカレンダーなどの他に、勝井三雄の思想が体現された作品
「土の記憶」「水を誌す」「ゆらぎとゆらぎ」をインスタレーションとともに再現します。

この他、書物の構造を再解釈して紙の彫刻へと展開した作品や、
人間が認識できる可視光の世界を巨大なインスタレーションへと展開した作品などを
美術館中央に位置するアトリウムギャラリーにて公開します。

本展の空間構成、広報物デザイン、展覧会に合わせて発行する作品集のデザインを担当しました。
ぜひご覧ください。

→特設サイト
→宇都宮美術館WEBサイト

 

●スライド+フロア・レクチャー「視覚の共振・勝井三雄」の展示デザイン
日時|2019年4月28日[日]
午後2時(開場:午後1時30分)~午後4時
会場宇都宮美術館 講義室
定員170名(先着)
※企画展チケットをお求めのうえ、会場に直接ご入場ください
講師|小野田裕士 氏(デザイナー)+中野豪雄 氏(聴き手、武蔵野美術大学准教授)
内容|勝井三雄の世界観をどのようにして展示空間へと展開したか、
その制作プロセスとデザインについてお話します。

●スライド+フロア・レクチャー「伝承のまなざし」
日時|2019年5月19日[日] 午後2時(開場:午後1時30分)~午後4時
会場宇都宮美術館 講義室
定員|170名(先着)
※企画展チケットをお求めのうえ、会場に直接ご入場ください
講師|寺山祐策 氏(武蔵野美術大学教授)+中野豪雄 氏(聴き手、同大学准教授)
内容|本展の企画・実現に尽力したお二人が「勝井デザインの魅力」について、
デザイン教育者の立場でお話します。

●記念講演会「共振する視覚」
日時|2019年6月2日[日]
午後1時30分(開場:午後1時)~午後3時30分
会場|宇都宮美術館 講義室
定員|170名(先着)
※企画展チケットをお求めのうえ、会場に直接ご入場ください
講師|勝井三雄 氏(グラフィック・デザイナー)
内容|「時代とデザイン」「自身の思想と創造」「デザイン教育」などについて、
作家本人がじっくりと語るスライド・レクチャーです。

● 担当学芸員によるギャラリー・トーク
日時|会期中毎週土曜日
午後2時~
※企画展チケットをお求めのうえ、中央ホールにお集まりください
[問い合わせ先] 宇都宮美術館 TEL.028-643-0100(代)

人が人へ情報を伝える、それを不特定多数で共有する、
そして世界共通の命題を解決するために役立つコミュニケーション・デザインの歴史は、
19世紀に遡ります。
人々の生活をより良くし、未来を拓く道具、空間や都市をテーマとする他の領域も同様です。
モダニズム(近代主義)の確立、二つの世界大戦、地球環境に対する意識の高まりなど、
私たちの暮らし・生き方を変貌させる出来事が次々と起こった20世紀は、
デザインがいっそう身近になりました。
デザイナーの活躍の場も広がり、その役割が重要となったのは言うまでもありません。
こうした背景を踏まえ、激動の時代を経験してきた勝井三雄(かついみつお)は、
常に世の中とデザインの動き、現在の有り様に鋭い視線を注ぎ、
明日を見据える創造的な挑戦を60年余にわたって続けています。
グラフィック(ポスターなど)、エディトリアル(書籍・雑誌・図録など)、
CI(コーポレイト・アイデンティティ)を中心に、サイン、ディスプレイ、空間構成ほか、
多様な媒体のアート・ディレクター(AD)を務めるなかで、領域の枠組みにとらわれることなく、
デザインの理論・表現について、その可能性と普遍性を模索してきたのです。
すなわち、状況にふさわしい視覚伝達を介して、物事の本質に触れるスムーズなコミュニケーションが
どれほど人々の相互理解を促し、生活、文化、社会、環境を充実させることができるか、
その優れた手段・取り組みの提案こそが、勝井三雄の仕事の根幹にあります。
本展は、まず「時代」に焦点を当て、今日に至るデザインの社会史と、国内外のデザイナー、
写真家、美術家、建築家、音楽家、評論家、編集者、小説家、科学者、民族学者ら、
勝井三雄が影響を受け、協働した人々とのつながりを示すところから展示が始まります。
続いて、ポスターや映像など「色と光」の分析・実験・展開に基づく作品群、
小冊子のエディトリアルから国家的規模の博覧会ディスプレイまで、
あるいは企業・学校・文化施設の存在意義を体現するCI、地球を俯瞰するインスタレーションなど
「情報の編集」に係る業績の集大成を紹介します。
未発表の資料、最新作も含む今回の展示は、空間構成そのものが勝井三雄の総合的なディレクションにより、
「なぜ人間はヴィジュアル・コミュニケーションを必要とするのか」を体感的に考えるための場となります。
長年にわたり宇都宮美術館のCIを推進してきた勝井三雄の活動を通じて、
当館が主眼とする「20世紀のアートとデザイン」を視覚伝達の観点からひもとく手がかりにもなるでしょう。
デザインは、単なる色とかたちの描出、その成果物ではありません。
時代・人々・空間と共振する思想であり、これを実践的に構築し、質の高い可視化を担うのが
デザイナーの役割です。勝井三雄のすべての仕事には、そのことが凝縮されています。

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